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2016年1月15日 (金)

ワシントン条約常設委員会レポート 1月12日~1月13日

■1月12日 ワシントン条約常設委員会でゾウの議題が審議された。Dsc_0012_2
○議題は大きく二つでした。
1つ目は「ゾウの保全、密猟および象牙取引について」という議題、
2つ目は「国別象牙行動計画の進捗」という議題でした。

○「ゾウの保全、密猟および象牙取引について」について
この議題の審議は、ほとんどが条約事務局から提出されていた書類に基づく報告でした。以下がその概要です。


・最新の情報に基づくアフリカゾウの個体数は、国際自然保護連合IUCNによる10年ぶりの報告書が今年中に公表される予定です。現在入手可能なデータによれば、2013年時点の個体数は2006年公表のIUCN報告との比較で、データに信頼がおけるアフリカのすべての地域でゾウが減少していることが示されています。確実な数とおそらく生息するだろうという数を含めても47万頭で、8万頭ほど減少しています。

 

・密猟は2006年以来急激に増え、2011年にピークに達し、わずかに減りましたが依然として大量の密猟が2012~2014年と継続しているという状況です(発見されるゾウの死体の6割以上が象牙目的で殺されたものと推定されている)。

・違法取引された象牙の世界での押収量は、2007年以降急激に増え、データがまとまっている2013年まで増え続けています。

 

○「国別象牙行動計画の進捗」の議論内容。
12日11時、「国別象牙行動計画」の議題について議論が始まりました。


この計画制度は、各国によるゾウに関するワシントン条約の国内実施を確保するため、象牙の違法取引へのかかわりがある国を「主要な懸念国」、「二次的な懸念国」、「重要監視国」の3つのカテゴリーに分け、「主要な懸念国」には「国別象牙行動計画」の策定を勧告し、その達成状況を条約会議で検証していく仕組みです。「主要な懸念国」に指定されると、計画の策定を義務付けられ常設委員会(事務局)による達成状況の評価が行われます。

 

 2013年の締約国会議CoP16では、中国、香港、ケニア、マレーシア、フィリピン、タイ、ウガンダ、タンザニア、ベトナムの8国+1地域が指定され、今回の常設委員会でその「国別象牙行動計画」の達成状況の評価が行われます。そして、9月にヨハネスブルグで開催される締約国会議CoP17では、改めて「主要な懸念国」、「二次的な懸念国」、「重要監視国」が選定しなおしになります。

 

 日本では、2006年以来、大型の密輸象牙の押収が報告されていないため、現在は「重要監視国」へ指定されており、自国の行っている象牙取引の規制状況と象牙の在庫量等を報告するだけにとどまり、条約会議からの評価を受けることはありませんでした。

 

 しかし、今回のEIAの調査結果の公表により、違法象牙を日本国内市場から排除する効果について疑問が呈されたことから、日本の象牙取引規制について政府代表・NGOから、日本政府からなされている象牙取引の規制状況と象牙の在庫量の報告は実態を反映していないのではないか等の質問がなされ、日本の釈明が求められる可能性が出てきました。日本政府の対応によっては、CoP17またはその後に日本のカテゴリーが「二次的な懸念国」、「主要な懸念国」に引き上げられ、条約による厳しい監視を受けるように推移する可能性も否定できません。

 

審議では、多くの国が国別象牙行動計画の進捗状況と今後の進め方について意見を述べましたが、その中で米国は、「日本は象牙の登録制度を再検証し、その結果を報告すべきである」と求めました。この指摘は、おそらく、この間EIAが日本の登録制度の調査結果を発表し国際的に報道されている内容が信頼できるものだと判断したためでしょう。

 

これに対して、日本は2点コメントがあるとして発言しました。

 

(環境省から)米国のコメントに関してだが、あるNGOがホール・タスクの登録について調査結果を報告している、そこでは近年の象牙登録量の増加が指摘されているが近年密輸の増加は確認されていないので象牙の登録量の増加と違法象牙の結びつかない、日本政府は国内象牙市場の規制を立ち入り検査を行うなどして適切に規制を行っていると発言しました。

 

(経産省から)前回の65回常設委員会における報告の誤りについて説明がありました。これは、象牙のカット・ピースの量の誤りについてであり、2014年5月8日時点でのカット・ピース(端材を含む)の在庫は合計約204トと報告していたが、正しくは約54トンだったということでした。 

 

桁違いの訂正は驚くべきことですが、それ自体日本政府のデータ管理のあり方に疑問を持たせるものでした。

 

日本政府は、審議の前に、「アフリカゾウの保全および象牙取引に関する日本の見解」という情報文書を条約事務局に提出し、回覧していました。

 

 そこではまず、基本的な見解として、合法に得られた象牙取引は、アフリカゾウを「種」として保全しつつ(個々の国、地域のゾウの個体群のすべてを保全することまでは必要ないという考え方を示唆)、地域開発に役立つと主張しています。

 

その上で、日本の規制の仕組みの説明、最近税関で発覚した象牙の押収が少ないこと、象牙を切断したとして登録票が返納された件数が少ないので消費が増えていないという主張をしています。その上で、近年の登録の増加は、法律の普及が進んだために、象牙の所有者が自発的に登録するようになっていることと、最近象牙所有者が死亡しその相続が増えているからだと主張しています。登録制度の中身の問題については、一切触れられていません。そして結論としては、これまでどおりワシントン条約の履行に努めると述べるだけで、新たな対策をとうることは何も示されていません。

 

 9月にヨハネスブルグで開催される締約国会議CoP17では、改めて「主要な懸念国」、「二次的な懸念国」、「重要監視国」の見直しが行われます。その前提として、見直しに向けた各国の今後の取り組みについても報告されることになります。

 

 米国から指摘を受けたことについて日本が無視するのか、何らかの行動を検討するのかが注目されます。


■1月13日 香港政府が象牙に関する重大発表を行いました。
香港政府が、(ワシントン条約で例外的に許されている)正規にハンティングしたゾウの牙を含めたすべての象牙の輸出入を禁止し、さらにすべての象牙の国内販売を無くすと宣言しました。
このところ、香港は、(日本も同様なのですが、)登録が形ばかりのものであるため、登録象牙を加工に使ってしまった後は新たに入手した密輸象牙を登録されていたものということにしてロンダリングする、という手口が横行していたのです。香港にも多数の関係業者がいる中での勇気ある決断でした。

EIAも香港政府の発表を受けて緊急のプレスリリースを行いました。

○香港政府の発表に対してのJTEF事務局長坂元のコメントです。
香港における大量の在庫象牙の管理のあり方は大きく問題視されてきました。昨秋、NHK香港支局もニュースで取り上げました。(実は日本の登録制度でも同じなのですが、)登録時にマーキングがなされないため、登録した牙か、すり替えられた違法象牙かの区別ができません。正規に登録した牙を加工した後には、新たに密輸した牙を登録してあった牙ということにして在庫を維持する手口が横行していました。香港は、違法象牙のトランジット港となっていることもあり厳しい目を向けられていたのです。

 

しかし、毎年3万頭の密猟が続く中、大消費国・トランジット国であるタイ、米国、中国に続き、ついに香港が象牙の国内販売をやめる政策決定をすることになりました。
これで日本の対応の特異さは、またいっそう際立つことになります。日本にとっても、自国産業の利害に固執して国際的な孤立を待つのでは外交的に相当なダメージです。生物多様性の保全、テロ資金の給源ともなっている野生生物犯罪の撲滅、アフリカ途上国による密猟との戦いの支援のため、国際社会と歩調を合わせ、思い切った政策決定をすべきときが近づいていることが肌で感じられるようになってきました。


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以下は期間中にJTEF坂元事務局長が撮った写真です。


※EIAのAllanさん(右)とDaielleさん(左)
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※会議の合間に開かれる野生生物犯罪セミナー。ワシントン大学のワッサー教授が押収象牙をDNA鑑定して殺されたゾウの生息地を突き止める技術の発展について発表中。
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※国連開発計画のバナー
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