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2015年10月15日 (木)

10月10日(土) 井の頭公園 ヤマネコ祭 ミニ講演 羽山伸一先生

Photo1_3 講師:

  羽山伸一(はやましんいち)先生 

日本獣医生命科学大学 獣医学部 野生動物学教授

 

 プロフィール:

 

 専門分野:

野生動物学

 

・ 主な著書:

  「野生動物救護ハンドブック」、文永堂出版 (1996年、共編著)
  「野生動物問題」、地人書館(2001年、単著)
  「野生との共存~行動する動物園と大学」羽山・土居・成島編、地人書館(2012年、共著)
  「野生動物管理~理論と技術」羽山・鈴木・梶・三浦編、文永堂出版(2012年、共著)

・ 学会活動:

 日本獣医学会 評議員 / 日本野生動物医学会 評議員 / 「野生生物と社会」学会 理事

・ 主な社会的活動


環境省・中央環境審議会・専門委員

   環境省・ゼニガタアザラシ科学委員会・委員長

   神奈川県・自然環境保全審議会・委員

 主なNPO活動

特定非営利活動法人・どうぶつたちの病院・副理事長
公益財団法人・日本動物愛護協会・学術顧 / JTEFトラゾウ保護基金 理事

 

 ヤマネコ祭りについて(主催者):

 

今回は第4回目の開催となりました。2009年に初回スタート、その後は2010年、2014年と続き、今年はイリオモテヤマネコ発見50年の年に当たる為、イリオモテヤマネコのミニ講演も組み込む事となりました。

 

 講義内容: 「離島の希少動物たち」

 

1. 島の生物相の特徴

 

(1) 島の生い立ちに関わる影響

 

2015年現在、日本には6852の島があり、その中の400の島が有人です。島の定義を「周囲が100メートル以上」とした場合の集計数字です。これらの島々の生成に影響する地史は以下に分類されます。

 

 海洋島

 陸橋

 巨大噴火

 

 海洋島: 

伊豆諸島、小笠原諸島、南大東島が海洋島に分類されます。過去の歴史の中で一度も陸地に接触したことが無い島々です。陸から離れている為に、昔は鳥類のみが島間で往来をして哺乳類はいませんでした。

 

 陸橋:

日本列島は地形が複雑で、大陸や国内の島間をつなぐ陸橋が氷期に形成され、そして氷期に消えることを繰り返しました。その為、日本の生物の分布は氷期-間氷期サイクルに伴って北上と南下を繰り返しました。氷期に形成される陸橋を通じた大陸からの移入や国内の島間の移動が活発でした。

 

(南西諸島の動物相)

 

南西諸島は、約150 万年前には台湾を経由して大陸と接続していたと考えられています。既にこの時期には海峡が成立し、本土とは分断されていました。 その後は、本土との接続がないまま、地殻変動や海水面の変化によって次第に島嶼化して現在に至っています。 接続していた更新世前期には主に南方系の動物が多く渡来したと考えられています。その後の島嶼化にともない、絶滅と分化の過程を経て、大陸とも本土とも異なる固有な動物相が形成されていきました。

 

(日本本土の動物相)

 

本土は大陸との接続と分離を繰り返していました。最後の接続は約2 万年前、サハリン方面と朝鮮半島方面とに陸橋が成立していたと考えられています。その後、徐々に海水面が上昇して現在に至っています。この氷期最盛期には、既に渡来して定着していた動物群に加えて、朝鮮半島経由或はサハリン経由で動物群が分布を広げたと考えられています。その後、海水面の上昇により朝鮮海峡、津軽海峡、対馬海峡、宗谷海峡の順に陸橋が切断され、大陸との近縁性を残しつつも、固有種への分化が進んで現在の動物相が形成されました。

 

 巨大噴火

 

巨大噴火は多くの生物及びその生息地を破壊します。約700万年前に九州で発生した火山噴火の連鎖は屋久島にも到達して屋久島は焼き尽くされました。然しながら、そのような受難の時期を経て屋久島杉に象徴される独特の生物相が形成されました。太古の時代より今日まで屋久島杉が残った理由は、島には人間と猿と鹿が存在し続けたからです。

 

(2) 島の面積の影響

 

島の生い立ちとその面積(大小)は密接な関係があることは古くから指摘されて来ました。最近の研究では、島面積が小さくなれば小さくなるほど生息している種の個体数が少なり、一方で絶滅危惧種の種類が多くなる事が分かっています。 離島に暮らす絶滅危惧種を保護保全するという事は、離島全体の生態系を守る事と不可分ではありません。

 

(最新研究による)               離島に生息する日本産絶滅危惧種数

                               
 

分類群

 
 

絶滅種

 
 

絶滅危惧種

 
 

IA

 
 

IB

 
 

II

 
 

哺乳類

 
 

4(2)

 
 

1510

 
 

2011

 
 

7(0)

 
 

鳥類

 
 

1310

 
 

216

 
 

3211

 
 

39(3)

 

カッコ内が離島に生息する種数

 

2. 離島における希少動物の課題

 

(1) 外来種の問題

(2) 動物医療

(3) 人口減少に伴う担い手の不足

 

(1) 外来種の問題

 

人間の活動を通じて日本に入ってきたものが多く存在しています。 最近ではアライグマが秋葉原に現れて混乱を起こしました。外来種の中で、地域の自然環境に大きな影響を与え、これまでの生物多様性を脅かす恐れがある物がいます。具体的な例として、沖縄本島や奄美大島に持ち込まれたマングースです。100年前に島内に増えたネズミ退治の為に島民が持ち込みました。 ヤンバルクイナはこれまで見たこともないマングースを全く警戒しなかったのは当然とは言え、マングースはヤンバルクイナにとって捕食者となりました。その結果、ヤンバルクイナの個体数は激減、今は絶滅危惧種です。

 

ツシマヤマネコの脅威となったのは、島に持ち込まれたネコです。ツシマヤマネコとそれらのネコが喧嘩をする事によってネコの病気がツシマヤマネコに移ります(猫由来のHIVエイズウイルスです)。ネコに対しての全く免疫を持っていなかったツシマヤマネコは激減しました。自分を自分で守る術を持っていなかったのです。

 

この対馬の状況(不名誉な事ではありますが)家ネコからヤマネコに感染した事例としては世界初でした。また、IUCNI外来種データベースによると、野生化した家ネコによる生態系へダメージ影響は世界各地で報告されており、根絶対策が実施されている割合はまだ大変に低いという現状となっています。

 

(2) 動物医療

 

動物保護には、外来種との接触によって引き起こされる想定外の事態を想定、念入りに事前に対策を打つ必要があります。また、怪我をした動物は迅速に救命する必要があります。その為、NPOどうぶつ達の病院が設立、野生動物の保護及び飼育動物の適正飼養に関する情報提供や啓発活動を行っています。

 

ツシマヤマネコ(長崎県対馬市)とイリオモテヤマネコ(沖縄県竹富町)を絶滅から救うため、九州・沖縄地域の獣医師会で構成される九州地区獣医師会連合会がヤマネコ保護協議会を設置し、避妊去勢無料手術やマイクロチップによる個体登録などの活動を開始しました。その後、市行政とも連携、結果として家ネコ/野良ネコを管理する条例が制定されました。家で猫を飼う場合、飼い主は届け出を行い獣医師による飼指導/不妊手術/ICチップ埋め込みが義務化されました。一方で、飼い主のいない島内の野良猫の捕獲/保護収容を行いました。この結果、ICチップの無い猫は捕らえる事が可能となりました。その結果、現在までにいずれに市町村共に島内の身元不明の猫は0匹となっているとの事です。家ネコ/野良ネコ対策はほぼ完全に実施されている状態にまで到達しています。

 

(動物病院)

 

ヤンバルクイナの生息地は沖縄本島の北部に集中しているにも関わらず、名護市より以北には動物病院は1件しかありません。本島の動物病院は南部だけ、と言って良い状況です。保護にはヤンバルクイナ生息地域に至急病院を建てる必要がありました。

 

そこで、もう使われていなかった保育園を病院に改装して治療を始めました。古い保育園でしたので外壁にペンキを塗った所、思いも寄らぬほど可愛い病院に変身しました。西表島ではかつてのJAバンクを改装して病院として運営されています。

 

(3) 人口減少に伴う担い手の不足

 

「人間がいなくなると環境が劣化する」理由は、希少動物の生息地は人間とその活動と共存している為です。

 

・  地域の人達が離農をして田んぼが作れなくなると、田んぼに依存しているツシマヤマネコ(田んぼは私のレストラン♪)は生存が脅かせられる事になります(*)。 田んぼに人がいなくなるとツシマヤマネコは危機に陥ります。 (*) 地元ではツシマヤマネコは「たねこ」と呼ばれることもあります。

 

 地域の人達が狩猟を辞めた事によってツシマシカの数が増加しつつあります。鹿は森林に取って大変大きな影響を与える動物です(森を食べ荒らす)今は1万頭位に増加しています。然しながら、鹿を打つ地元のハンターは100人も居ない状態です。 

 

このような状況下では、ツシマヤマネコの生息地状況は劣化の一途を辿っています。対策として、シカに食べられないようにネットを張って森の一部の保護を行い(*)、一方でどんぐりから育てた森を育てています。然し、個体数は増加していないのが現状です。個体を少しでも増やす為、対馬野生生物保護ターでは、啓蒙活動はもとより保護されたヤマネコを再び野生に帰すために様々な治療やリハビリなどを行っています。動物保護病院としては世界最大規模のセンターです。

 

*)ツシマヤマネコの餌場を確保する取り組みとして、ツシマシカは入ることができずネズミやツシマヤマネコは入ることができる空間にネットを張っています。するとネット内は草が生い茂りネズミなどが生息するようになって、ツシマヤマネコの良い餌場となるからです。

 

 

3. まとめ

野生動物と自然環境は不可分のものです。そして、公共工事ではなく、野生動物と自然環境を維持する為にこそお金を使う国にならなくてはならないと考えます。

 

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